【ネタバレ】大学院生から見たシン・ゴジラ感想「庵野という神に踊らされたキャラクター達」

こんにちは、Ichi先輩@Abstract1Life)です。

シン・ゴジラ見てきました。いや、出遅れたとは思うんですが、何せ正直なところ、最初はあんまり興味がなかったんです、ゴジラに。

わたし的にゴジラといえば、特撮ゴテゴテの、どうせ人間の攻撃はゴジラに歯が立たなくて、ご都合主義的に怪獣同士でやりあって、最終的に海に帰っていく、そんな偏見に満ちた印象があったんですよね。ただ、庵野秀明が監督をしているという点と、どうやら面白いらしいという点、この2点を耳にして、やっとこの偏見を打ち砕きつつ、重い腰を上げて、自らハードルを上げて見に行った次第です。

見に行ったのは土曜日の9:00開始の回。子ども(小学生低学年ぐらい?)連れが近くにいて「あぁ…この子は最後まで庵野の瘴気に耐え切れるのだろうか」と不安を覚えつつも、上映開始。

全編通しての感想

全編を通しての感想としては、庵野さんが作った映画だと言うことは明白に分かることながら、監督が傀儡を操っているかのごとく、感情というか人間味がすっぽり抜け落ちていて「あぁ、庵野秀明という神にキャラクターたちが踊らされている」という何ともアニメーションチックだな、という感想を抱きました。

誤解をまねくといけませんのではっきり述べておきますが、非常に面白かったです。

基本的に作中で描かれるキャラクター達は、職業人としての、仕事をしている人間であって、この人たちは生活していません。何かしら「生活」を感じるのは食べ終わった後のカップ麺が映し出される瞬間や、美味しそうなおにぎりと思いきや、コイツが握ったのかと一気に食欲をなくす色目を使う片桐はいりが登場するシーンぐらいです。

それに、ひたすらに淡々と、展開に必要なシーンのみをテンポよく移し変えていくのはアニメーションを感じました。テンポがいい作品は単純にとても見やすいです。

わたし自身は結構邦画が好きなんですよ。でも嫌いな邦画は山ほどあります。嫌いな邦画は無意味に感動を強いたり、良く分からない感情を描くシーンが無駄に多いような、つまり感情を視聴者に押し付ける映画です。

反骨精神なんでしょうか、感情を押し付けられると、それはこちらで処理するからと、素直に受け取れないのです。そういう私からすると、本作は「無駄」だと思うような部分が取り除かれていたのが、非常にクールだと思った1つのポイントです。

ピックアップシーンの感想

気になったシーンとしては、まず、有識者3名が呼び出され、総理と対面して意見を求められる部分。

3人とも実際に見てみたり、調査しないことには結論は出せないという姿勢で意見を述べており、堅物で使えない学者であるかのように描かれています。

この後に、「話の分かる研究者」として若手の女性が招集され、映像を見ながら解析結果を述べるのだけど、どうにも腑に落ちない。

3名の学者に関しては、学者として非常に正しい姿勢を貫いています。それに、学者としての今までの経験と知識をフルに生かして「新種の生物」である可能性まで提言しておきながら無能扱いされているのはどうかと思う。

安易に下手な憶測を述べない、信頼できる学者ではないだろうか。

そして、もう1つ腑に落ちない点としては何故この3名の学者には、形状の推測できそうな映像を見せなかったのかという点。

3名が見せられたのは本当に大雑把な海の映像だけで、川に入り込んだ映像を見ていれば、後に登場する”有能な”研究者と同様の意見を述べらたのではないかと勘ぐってしまう。

タイミング的な問題もあるかもしれないし、まぁ、映画だからと言われてしまえば仕方ない話ではあるけれど、ステレオタイプな学者としてある意味笑いどころにされてしまうのは何というか、違うと思うのです。

あと、第一形態のゴジラが登場したときには、「あ、コイツきっと小物の敵で、後々登場するゴジラにすぐに倒されるタイプの敵のヤツだ」と思ってしまいました。

すぐにコイツがゴジラだとは認識できなかったんです。でも、徐々にコイツがゴジラなんだって認識するにつれて、深海生物特有の瞳を持った、何の感情も篭っていない目が、わたしに恐怖の感情を確実に植え付けていきました。

現実世界でも何をするか分からないヤツが一番怖いのと一緒で、このゴジラがいったいこれから何をするのか分からなかったんです。

典型的なパターンは一応知っているので、大体東京付近で暴れるんだろうなっていう憶測は、前知識的に推測可能なんですが、それでも、このゴジラはもっと想像できないような、どうにもおぞましい行動を取るんじゃないかってそんな空気感を受け取りました。

結局東京付近で暴れただけだったんですけど、アイツは本当はもっと出来る怪物だと思うんですよ。

のちに一緒に見た彼女に聞いたら「何か目がおっきくて第一形態は可愛かった」と言っていて、母性本能ってヤツは一生分からないものだということを確信したことをここに付け加えておきます。

さいごに

細かく書けば他にも色々あるのでしょうが、私として強く思ったのはこのあたりでしょうか。

ご都合主義うんぬんに関しては、作戦内容自体からまるっと日本っぽくていいじゃんなんて思います。監督がこの映画で何を表現したかったのかとか、そこまでは完全には受け取れません。

被災とか原爆とか、そういう要素も多分に含んだ内容ではあるので、議論や意見もあるとは思いますが、1つのドキュメンタリー作品として胸に刻むというのが穏便にすむ方法なのではないかと個人的には思います。

最後まで読んでくれたあなたに、ありがとう。